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高山で「日本再発見塾」合宿-日本料理人・野崎洋光さんと郷土料理学ぶ

(写真右から)飛騨高山の郷土料理を前に談笑する神出さんと野崎さん

(写真右から)飛騨高山の郷土料理を前に談笑する神出さんと野崎さん

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 高山で5月4日、日本料理人の野崎洋光さんを招き「飛騨高山の郷土料理を学ぶ会」が行われた。「第8回 日本再発見塾in飛騨高山」合宿の第2弾となるもので、東京財団がサポートする日本再発見塾実行委員会が主催した。

料理の盛り付けを披露する野崎さん

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 懐石料理店「分とく山(わけとくやま)」(東京都港区)の総料理長で同塾呼び掛け人メンバーの野崎さんは、NHK「きょうの料理」講師や2004年アテネオリンピックで「長嶋ジャパン」の総料理長を務めた経歴を持つ。

 野崎さんは高山市内の漬物工場などを見学した後、「飛騨高山 森のエコハウス」(高山市西之一色町)に場所を移し、学生実行委員や若い主婦など同塾の関係者ら30人と高山の郷土料理の試食会を行った。

テーブルには、「にたくもじ」(『くもじ=赤カブ漬けの葉の部分』を油・しょうゆ・みりんなどで炒め煮た料理)をはじめ、「なつめの甘露煮」「クルミのあめ炊き」「ホウレン草のあぶらえあえ」など、飛騨高山伝統の庶民的な郷土料理24品以上が所狭しと並び、野崎さんと参加者に振る舞われた。

 同会の参加者たちは「肉や魚料理が無いのに、すごく豪華に見える」「今まで調味料に頼りすぎていた。砂糖など、調味料を最小限しか使っていないのがすごくよく分かる。素材の味とはこういう味なのかと初めて知り衝撃的を受けた」「聞いた事はあっても見たことが無かった料理や、昔おいしいと思ったのに忘れていた料理に会えてうれしかった。おばあちゃんが作ってくれた懐かしい味を思い出した。自分も料理方法を覚えたい」などと話していた。

 この日の料理を担当した、高山市在住の女性史・郷土料理史研究家の神出加代子さんは「今回、何とか飛騨の地野菜をかき集めたが、正直、食材調達でこんなに苦労するとは思わなかった。昔は当たり前に飛騨にあった野菜が今ではどこにも売っていない。これは、裏を返せば郷土料理の衰退を物語っている。『地産地消』とよく耳にするが、いかに空洞的な言葉か。郷土料理は地元の伝統食材あってこそ。しかし今日は、だんだん失われていく料理を、若い人に伝えられる機会に出会えてうれしい」と話す。

 野崎さんは合宿を振り返り、「景観や文化崩壊の一番先端は、実は食文化だろうと思っている。水は源流と下流ではどっちがうまい水か、本当はみんな知っているはず。地元の人が『遅れた文化』だと思い込んでいるものは全然遅れてなんかいない。むしろ、とても裕福な文化」と話す。

 「文明と文化は似ているようで違う。例えるなら『マヨネーズ』と『白あえ』の違い。今回の飛騨合宿では、魚のダシを使わず野菜本来のうま味を最大限引き出す料理がたくさんあって感激した。そしてどれもおいしかった。『ここにしかない味』は『生きるための知恵』の塊。色々な物がなぜ何百年も続いてきたのかを考えてみる。当塾が、そのきっかけになれれば」と野崎さん。

 野崎さんは、6月2日・3日に開催予定の「第8回 日本再発見塾in飛騨高山」で再び高山を訪れる。

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