飛騨地方でアユ釣りの聖地として知られる下呂市馬瀬西村の馬瀬川河畔に9月3日、23年ぶりとなる「馬瀬川観光ヤナ」がオープンした。
「ヤナ」は、木や竹で作ったすのこを渡した足場を川の中に設置し、打ち上げられた魚を捕る漁法。馬瀬川では、1989年に地域観光の目玉として「観光ヤナ」を設置し運営を試みたが、急峻(きゅうしゅん)な河川の地形が生む鉄砲水により足場の維持が難しく断念していた。
2007年8月、最もおいしいアユのいる川を決める「全国利きアユ大会(第10回・東京都)」で「馬瀬川のアユ」がグランプリを獲得したことで再び地域活性化の機運が高まり、翌年に地元有志による準備委員会を創設。今年4月に自治体や地元企業、漁協と連携し「馬瀬川やなプロジェクト実行委員会」を立ち上げ悲願の「観光ヤナ」完成にこぎ着けた。
今回完成したヤナは全長約15メートル、幅4メートル、すのこの傾斜角度は約5度。岐阜大学工学部などの協力で構造計算や安全性を研究し、本流を大きな岩積みでせき止め魚道となる支流も確保、建材は地元林から切り出したスギやヒノキの間伐材を使用した。ヤナ場はシーズン終了ごとに解体撤去し、オープン時に組み直すという。
同委員会の森本繁司委員長は「まずはアユが落ちる今月中旬からヤナ場の状況を見ながら、天然アユ料理のアイデアやお客さまに喜ばれるサービスを地域一体となって考えたい。日本一のブランドアユをテーマに、馬瀬の地域活性化や雇用の創出にもつなげていければ」と意欲を見せる。
「馬瀬川観光ヤナ」は試験運用のため今シーズンの営業を見送り、来年夏の本格稼動を目指す。