高山市民文化会館(高山市昭和町)で1月12日、「自然エネルギー利用日本一のまちづくり」を考える公開フォーラム「高山エネルギー大作戦会議」が開催された。主催は高山市。
市の推進する「世界に発信できる自然エネルギー自給のまち」実現に向け、昨年1月から始まった同フォーラムは今年で2回目。市民約300人が集まった。
会場では、クリーンエネルギー機器などの展示をはじめ、自給生活関連などの書籍を売る本屋やオーガニックフード出店、アート展示、音楽ライブ、餅つき、花餅作りなども行われにぎわった。
前回は、「里山資本主義」著者の藻谷浩介さん、作家のいとうせいこうさんが登壇。伝達情報の「見える化」などを提案した。今回は、NPO法人環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也さん、地域再生機構副理事長の平野彰秀さん、ひだ自然エネルギー協議会会長の岡田贊三さん、高山市自然エネルギーによるまちづくり検討委員会委員の井上正さん、NPO法人活エネルギーアカデミー代表理事の山崎昌彦さん、國島芳明高山市長らが登壇したほか、同フォーラムのテーマソングを制作した高山市出身のブルースラップシンガー・DAGFORCE(ダグフォース)さんが総合司会を務めた。
二部構成で開かれたこの日のフォーラムは、「高山の公共の利益を実現するために市民みんなが参画できる『カイシャ』組織設立のビジョンをつくろう」がテーマ。
第一部で、自然エネルギー活用を推進する地元部会報告の進行役を務めた平野彰秀さんは「協議会は一部の市民だけで事案を決めるものでなく、市民みんなで考え、力を集結して作り上げていくものにしたい。そのために、市民が参加して物事を前に進めていける場作りとして当フォーラムを企画した」と話す。
部会報告に続いて行われた基調講演「地域の地域による地域のための会社のかたち」では、講師の飯田哲也さんが「世界の国々では今、エネルギー調達手段がこれまでの大規模・中央集中から、小規模・地方分散へと変化している」と話し、「もし高山市がエネルギー自給率100%になった場合、人口の割合から計算すると、これまで外に流出していた約70億円が市内で回せるようになる」と持論を展開。「自給のまちづくり実現に当たり一番大切なのは、エネルギー調達の手段を考えるより先に、地域にコミュニケーションの場を作る事」と結んだ。
第2部は、「オール高山」で取り組む公的な役割を持ったエネルギー事業主体(カイシャ)設立の具体案について、國島市長など登壇者6人らによる公開会議が行われた。「活用した間伐材のエネルギーを18リットルの灯油タンクに置き換えるなどして、時々刻々と進む成果情報を一般に分かりやすい数値で明示することで、市民に大きな参加の実感が生まれるのでは」「自然エネルギーを市の公共施設で積極的に使い、浮いたお金を組織の運営資金に充てる」などの提案が交わされた。
このほか、会場の市民から登壇者に向けて、「一般からの提言が届くアイデアの架け橋のような仕組みを作ってほしい」「原発推進の動きや大きなしがらみに流されない組織であってほしい」などの意見が寄せられた。
いとうせこうさんもビデオレターで出演し、「高山がついに『カイシャ』を作るという事で、すごく面白い動き。グローバルをローカルが追い越し引っ張っていく『グローカル』のダイナミズムを感じる。江戸の街から出た浮世絵が世界を席巻しように、高山エネルギー大作戦もそうであってほしい」とエールを送った。
総合司会を終えたDAGFORCEさんは「次の100年後の子どもたちが自信と誇りを持てる高山の街になるよう、応援する力になりたい」と話す。
30代の男性参加者の一人は「予想していたより若者の姿が多く、心強く感じた。今年一年、このフォーラムを通じて思った事を基に実際の行動に移したい」と意気込む。