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高山で「幸福の黄色い花プロジェクト」-震災から2年、美しい河川敷復活祈り

菜の花の種を手製のプランターに植える参加者親子

菜の花の種を手製のプランターに植える参加者親子

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 東日本大震災から2年を迎えた3月11日、飛騨各地では犠牲者への追悼と被災地の復興を祈念するさまざまな催しが開かれた。高山市総合福祉センター(高山市昭和町)では「幸福の黄色い花プロジェクト」が行われた。

季節外れの6月に満開となる菜の花

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 津波で甚大な被害を受けた岩手県大槌町に菜の花があふれる美しい河川敷を取り戻すため、震災の記憶を風化させないよう毎年この時期からスタートする同プロジェクトは今年で2回目。

 きっかけは震災直後の4月。当時、高山市では岩手県の災害復興支援を担当した岐阜県の呼び掛けで「飛騨高山ボランティア隊」が結成された。隊員たちは現場の岩手県大槌町で災害復旧のボランティア活動を進める中、家財道具が散乱し荒れ果てた現地の河川敷で黙々と汗を流す一人の男性に出会った。

 男性の名は金山文造さん。隊員たちは「突然失くした友が空の高いところから見守ってくれるように、幸せの黄色い花いっぱいの河川敷を作りたい」と話す金山さんの思いに心打たれた。

 その後、金山さんから菜の花の種をもらった隊員たちは「この出来事を過去の思い出として記憶の奥底へしまい込んではならない」と、遠く離れた高山で毎年必ず菜の花を咲かせ大槌町に種を送ることを誓った。

 同プロジェクトに携わるスタッフの一人は「通常、菜の花は秋に植え3~4月に花を咲かせるもの。当初は寒い高山で季節外れの時期に植えて本当に育つのか心配だった。専門家のアドバイスを受けながら温度調整や水やりに注意して大切に育てた」と昨年度の取り組みを振り返る。

 「5月に花が咲き始め、6月にプランターの中で黄色い花が満開になったときは本当にうれしくて感動した。家庭へ持ち帰り育てていた参加者からも菜の花の写真がたくさん寄せられ、昨年はみんなで集めた800グラムの種を大槌町へ送ることができた。今年も1~2カ月遅れの開花・種の収穫になるだろうが自信を持って育て上げたい」と笑顔を見せる。

 平日開催となったこの日、会場には子ども連れや年配者を中心に約100人の市民が集まり、各自持ち寄ったペットボトルで鉢植え代わりのミニプランターを製作して菜の花の種を植えた。市園芸福祉協議会員の育て方アドバイスに真剣に耳を傾けていた参加者の一人は「自分にできることは小さいけれど何かをせずにはいられなくて参加した。この日を忘れないよう大切に育てたい」と話す。

 会場では、飛騨高山高校書道部「書道ガールズ」による書のパフォーマンスも行われ、書き上がった巨大な書を全員で囲み震災発生時刻の14時46分、犠牲者への黙とうがささげられた。

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