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高山のギャラリーで「青い目の人形」展-「未来へ伝える平和の祈り」テーマに

来場を呼び掛けるギャラリー店主の布山淳一さん

来場を呼び掛けるギャラリー店主の布山淳一さん

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 高山の画廊「ギャラリー満喜田」(高山市本町2、TEL 090-6587-1550)で7月19日から、「青い目の人形」展が開催される。

ミス岐阜

 「未来へ伝える平和の祈り」がテーマの同展。8月15日の終戦記念日と、国際連合が定めた9月21日の「国際世界平和デー」、同21日の「高山市平和の日」を前に「戦争と平和」について考えるきっかけにしてもらおうと企画した。

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 展示する「青い目の人形」は、「メリープランナー」ちゃん、「バッテロー」ちゃんと名付けられた青い目をした小さな子ども姿の陶器製人形2体。体長45センチほど。飛騨での展示は今回が初めて。

 人形は1927(昭和2)年、日本のひな祭りに合わせアメリカから日米親善のため海を渡った1万2000体以上におよぶ友情人形のうち、岐阜県にある2体の実物。同店主の布山淳一さんによると、この人形には戦争にまつわる悲しい物語があるという。

 時代は大正から昭和にかけての過渡期。日本では第1次世界大戦や関東大震災による経済不況が国内に蔓延(まんえん)し、アメリカも同じく不況を抱えていた。そんな中、日露戦争後に満州権益を握った日本軍と中国進出を狙うアメリカ軍との軋轢(あつれき)、低賃金でもよく働く米国内の日本人移民労働者に対する反日感情などを背景に1924(大正13)年、米国議会でジョンソン=リード法(通称・排日移民法)が可決された。

 高まり続ける日米両国間の感情的対立と政治的緊張を懸念し、日本に20年間滞在した経験を持つアメリカ人牧師シドニー・ルイス・ギューリックさんが一計を案じる。それが、親善大使としてアメリカから「青い目の人形」を贈るという活動だった。ギューリックさんが全米の子どもたちに呼び掛けると、6カ月ほどで1万2739体の人形が集まったという。

 人形はパスポートビザと日本までの片道切符、「お友達になってください」と書かれた子どもたちの手紙などを携え1927年1月、第1陣が横浜港に到着。続いて各州の代表人形48体と「ミス・アメリカ」も来日。当時、日本では童謡「青い目の人形」が歌われていたことも手伝い大きな話題を呼び、日本青年館(東京都新宿区)では2000人規模の歓迎式典が行われた。

 人形はその後、全国各地の小学校、幼稚園に配布。岐阜県には235体が贈られた。当時の県当局でも「人形の使命を果たさせるため、これを機会に子どもたちにアメリカと日本とが仲良く握手して、世界平和のために貢献せねばならぬことを講話するように」と各所に通達したという。

 人形には、「決して答礼の心配はいりません」と書かれたギューリックさんの親書が添えられていたが、日本側では「答礼人形」準備を呼び掛け。全国の小学生から1銭ずつ集めた募金を元に、「ミス岐阜」など各都道府県と6大都市などの代表人形(市松人形)58体が製作され、たくさんの土産と子どもたちの手紙を携えた答礼人形が海を渡り、アメリカ全土で歓迎された。

 1941(昭和16)年、日米両国は人形の願いもむなしく開戦。「青い目の人形」は敵国アメリカを想起する物として竹槍の的にされたり、火あぶりにされたりと全国で破壊活動が行われた。当時の新聞記事にも「児童は叫ぶ 叩(たた)き壊せ『青い目の人形』 どうするか?の試問に答へた敵愾心(てきがいしん)」(以上原文ママ、1943年2月20日、毎日新聞)との物々しい見出しが躍る。

 岐阜県内でもほとんどが破壊されたというが、和知小学校(加茂郡八百津町、バッテロー)と上麻生小学校(加茂郡七宗町、メリープランナー)の2体が奇跡的に難を逃れた。バッテローは当時在職中の水谷正雄さんが「人形に罪はない」と、理科室の鉱物標本棚の奥にくぎを打ち付けた箱に入れ隠し、メリープランナーは戦後の倉庫整理で焼却処分されようとしていた寸前で棚橋充子さんが救出しもらい受けた。

 同店主の布山淳一さんによると、岐阜県内で現存が確認されている「青い目の人形」はこの2体のみ。全国では300体余りという。「物言わぬ人形の実物を目の当たりにして、戦争の愚かさを顧みるきっかけにしてほしい」と話す。

 「人形の歴史を知る当時の小学生も今や皆、90歳になる。実際の体験話が聞ける今のうちに展示をやらないと永遠にきっかけを失い、忘れ去られてしまうのが怖かった」とも。

 布山さんは「おいしい物が食べたい時に食べられて、見たい物が見たい時に見られる自由や平和は当たり前のことでなく、意識や努力なしでは維持できないということを五感で学んでほしい。当展をきっかけに、今ある平和の大切さを感じていただければ。特に未来を担う小さな子どもをはじめ、園児、小中学生にたくさん見て知ってほしい。ぜひ親子連れでご来場いただきたい」と呼び掛ける。

 7月19日13時から、「ミス岐阜の会」事務局長の魚次龍雄さんを招く講演会「青い目の人形と戦争と平和」。同20日は13時と16時の2回、「メリープランナー」保管者の棚橋充子さんによる紙芝居「友情人形メリーちゃん」、同27日は18時からウクレレコンサートを開く。以上、参加無料(要予約)。開催場所はいずれも同ギャラリー。

 開廊時間は10時~18時。水曜休廊。入場無料。今月27日まで。