飛騨国分寺(高山市総和町1)境内で7月30日、屋外映画上映会「国分寺シネマ2016」が行われた。
映画館のない飛騨地域で大勢の人が映画を見る機会を創出し、町の文化振興と地域活性化を目指そうと、地元有志ら4人でつくる実行委員会が企画した同イベントは今回が初めて。
上映した映画は、2009年制作のインド映画「きっと、うまくいく」(171分、原題『3 Idiots』)。同国の歴代興行収入1位を記録したほか、2010年インドアカデミー賞で史上最多16部門を受賞した名作。インド屈指のエリート理系大学に通う個性豊かな3人の大学生が繰り広げる青春劇と、その10年後に行方不明となった同窓生を探す若者たちの旅を描くミステリー仕立てのヒューマン・コメディー。
県重要文化財「三重塔」の横に200インチのスクリーンを設置し、入場無料で行ったこの日、会場には19時30分の開演を前に続々と人が集まり、地元民を中心に約70人が来場。用意した50人分の椅子席はすぐに満席となり、立ち見も出る盛況ぶりでにぎわいを見せた。
夕立が日中の暑さを和らげた涼しげな境内で、上映時間3時間近くに及ぶ長編映画を見終え、地元在住の50代女性は「現代の日本にも当てはまるテーマ性を含んでいて、とても興味深く、時間を忘れて最後まで見入ってしまった。お寺という場所、夏の夜の外の雰囲気、映画の内容、全てがよく、久しぶりにいい時間が過ごせた」と笑顔を見せる。
初めて見るインド映画を楽しみに近所から来たという70代の3人組は「飛騨に映画館の文化がなくなってしまいとても寂しく思っていたが、このような場を作ってくれる若者が地元にいて、まだまだ世の中捨てたものではないと勇気づけられた。高山の新たな文化の一つとして、これからもすっと続けてほしい」とエールを送る。
同寺院副住職で同イベント実行委員長の北原隆世さんは「上映中にどしゃ降りの雨が来たらどうしようと気が気ではなかったが、天候にも恵まれ何とか無事終わってホッとした」と胸をなで下ろす。
今回上映した映画は北原さんの好きな映画で、タイトル名を狙ったわけではなかったが、イベント協賛先を回る中で多くの人に「うまくいくといいね」「きっとうまくいくよ」と励まされたという。
「一人で見る映画もいいが、大勢で見る映画本来の醍醐味(だいごみ)を伝える場として、これからも自分のお寺を有効に活用していきたい。教育や文化の発信地だった、かつての寺院の機能を今一度呼び戻し、地域の幅広い世代の人たちと共有できれば。屋外上映会は継続したい」と意欲を見せる。
「取り組みは始まったばかり。安定して回を重ねていくためにはそれなりの体制作りが必要。まずは運営スタッフをもっと増やしたい。世に埋もれている映画で誰もが楽しめるエンターテインメント性があり、何かを考えさせられるような良質の映画を紹介する、当上映会の趣旨に賛同していただける映画好きの人がいたらぜひ協力してほしい」と呼び掛ける。
問い合わせは北原さん(TEL 080-1555-8440)まで。