下呂温泉の芸妓(げいぎ)関係者らでつくる「湯之花芸妓連」(下呂市湯之島)で4月1日、2人の新人舞妓(まいこ)がデビューした。下呂温泉で舞妓が誕生するのは1960(昭和35)年以来52年ぶりとなる。
この日、「お店出し」として正式に舞妓デビューを果たした「雛乃(ひなの)」さんと「菊乃(きくの)」さんは幼なじみで共に今春地元の高校を卒業したばかりの18歳。
母親が現役の芸妓(げいぎ)という雛乃さんは、幼いころから三味線や日本舞踊を学んできた。「子どものころから母の太鼓に合わせて三味線を弾いたりしながら、いつか母と一緒にお座敷に出てみたいと思っていた。将来はいろいろな芸事ができる芸妓さんを目指したい」と話す。
「高2の終わりに雛乃さんに誘われて同じ道に進む決意をした」という菊乃さんは、「京都で出会った舞妓さんのきれいな姿に憧れていた。これまで芸事の経験がなかったので最初は不安だったが、先生もやさしく教えてくださるので安心した。一生懸命稽古して下呂温泉にお客さんが大勢来ていただけるよう頑張りたい」と意欲を見せる。
雛乃さんの母「ゆり」さんは「2人が舞妓になりたいと聞いた時には驚いた。厳しい世界なので複雑な心境だったが気持ちはうれしかった。社会勉強にはこの上ない経験になると思うので、厳しさを乗り越えて頑張ってほしい」と2人にエールを送った。
当日、同温泉地内には新人舞妓お披露目のお練り行列を知らせるアナウンスが流れ、晴れ姿を一目見ようと集まった地元住民や観光客でにぎわった。この日の事情を知らずに偶然通りがかったという菊乃さんの兄が、着飾った妹と対面して両者涙ぐみ、もらい泣きをする観客が続出するという感動の一幕も。
祝福の声援に包まれた2人の新人舞妓は、町内の「かえる神社」や商店街を練り歩いた後、商売の成功祈願のため同地内にある「温泉寺」を参詣し、絵馬の奉納や奉納舞踊を披露した。
湯之花芸妓連の福富美佐子代表理事は「2人は『下呂温泉の宝』。芸妓のいる湯の町・下呂温泉の伝統文化を明るく引き継いでいってもらえるよう大切に見守り育てたい」と話す。