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飛騨びとのルーツ、母「縄文系」・父「弥生系」-DNA解読で立証、11月に学会発表

「縄文系女性は二重まぶた、弥生系は一重」など特徴を説明する住さん(左)と、研究協力者の佐藤さん(右)

「縄文系女性は二重まぶた、弥生系は一重」など特徴を説明する住さん(左)と、研究協力者の佐藤さん(右)

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 高山市在住の理論物理学者で筑波大名誉教授の住斉(すみひとし)さんが6月30日、「飛騨びとのルーツを科学的に立証した」とするDNA解析の研究成果を公表した。

縄文系と弥生系、頭蓋骨の違い

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 住さんによれば、「飛騨は、母方に縄文人(日本列島の先住民族)、父方に弥生人(中国大陸からの渡来系民族)のDNAを受け継いでいる人の割合が平均よりも高い」という。「いわば和魂洋才タイプのDNAは、飛騨の文化形成の基盤にもなっているのでは」との見解も示す。

 研究では、明治・大正期以前に生まれた血縁を持つ飛騨地域3市1村の1100人を対象に、口腔粘膜から生体試料を採取。東京大学生物科学専攻・人類学教室で「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法」によるDNA増殖後、名古屋大学遺伝子実験施設に解析を依頼した。

 解析データを基に、住さんが734人分のミトコンドリアDNA型(mtDNA)で母方を調べ、3年前偶然知り合ったという同郷の後輩で徳島大准教授の佐藤陽一さん(人類遺伝学)に、378人分のY染色体単鎖DNAハプロタイプ型(Y-STR)で父方の解読を依頼。それぞれ塩基配列の違いを調査したところ、母方DNAでは「縄文系62%、弥生系38%」に対し、父方では「縄文系41%、弥生系59%」と対照的な結果になった。

 住さんは7年前に筑波大学を定年退職後、「飛騨びとのルーツは日本先住民族の縄文人である」との予測を基にライフワークとして同研究を開始。当初、友人からは「沖縄や東北はDNAの影響を色濃く受ける顔にはっきりとした特徴があるが、飛騨びとにはないから、おそらく(DNAに)偏りはない。この研究は実らないのでは」と言われたという。

 「今回の研究で、飛騨びとのDNAは2重構造になっているため、顔の特徴に偏りが出ない縄文系民族であるという科学的根拠を示すことができた。また一つ新しい世界が広がった。研究を始めて本当によかった」と笑顔を見せる。

 「では、なぜそのような状況が起きたのか?」と住さん。「 稲作文化とともに飛騨に進出してきた弥生系男性が権力者となり、複数の縄文系女性との間に子孫を残した時、その子孫も皆権力者となる確率が高い。単純計算で土着縄文人男性の30倍速で弥生系男性のY染色体が増えていったのではないか」との仮説を立てる。

 同研究は、11月に茨城県つくば市で開かれる「第67回日本人類学会」で発表する。

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