高山市街地で6月18日、国天然記念物のニホンカモシカが出没し、県と市の職員、警察らによる大捕物(おおとりもの)が繰り広げられたが逃げられた。
同日朝8時ごろ、中型のカモシカ1頭が高山市中心部にある観光スポットや鍛冶(かじ)橋、国分寺通り商店街などを歩いているとの連絡を受け、野生の鳥獣保護を管轄する岐阜県飛騨振興局や高山市役所、高山警察署の職員らが現場に駆け付けた。
カモシカはJR高山駅構内に逃げ込んだ所、止まっていた列車が警笛を鳴らしてこれを威嚇。線路伝いに花里町へ移動すると、ガソリンスタンド横のビルの階段で、県と市の男性職員2人に追い詰められた。
県職員がカモシカに近づき、角をつかんで動きを止めた。市職員がガムテープでカモシカの手足を縛ろうとしたが、手袋が滑ってうまくテープをはがせない。手袋を脱ごうとしている一瞬の隙を突いてカモシカが必死の抵抗を見せ、最大の捕獲チャンスは失敗に終わった。
カモシカはその後、職員らの猛追をかわしながら街を北上。桐生町から万人橋を経由し三福寺町に逃げ込むと、途中川に入るなどの頭脳プレーで職員らを手玉に取り、最後は近くの山林に姿を消した。
約1時間30分にわたる大捕物を終え、県職員の男性は「カモシカが街に出てくるのは飛騨では珍しくも何ともない、よくあること。今年5月上旬にも似たような捕物があった。その時は捕獲に成功したが、今回はカモシカに軍配。ともあれ、けが人や交通事故もなく、カモシカも無事山に帰ってくれてまずはひと安心」と胸をなで下ろす。
「シカと名は付いているが分類学上はウシの仲間。攻撃的な性格ではないが、意図せず山から下りてきてしまい不慣れな環境で興奮状態となっている時は、頭突きで向かってくることもある。その辺をおとなしく歩いているぶんには、刺激しなければ自然と山に帰るので、見掛けても騒がず慌てず温かく見守ってほしい」と呼び掛ける。