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高山の社会人2人が「山中和紙」商品製作-飛騨産和紙の魅力発信に意欲

山中和紙のオリジナル商品試作品を前に笑顔の中畑さん(左)と加藤さん(右)

山中和紙のオリジナル商品試作品を前に笑顔の中畑さん(左)と加藤さん(右)

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 高山市出身の社会人男性2人が現在、飛騨産和紙の魅力を広く知ってもらおうと飛騨市河合町特産の「山中和紙(さんちゅうわし)」を使ったオリジナル絵はがきを製作し、新たな商品開発につなげる取り組みを行っている。

飛騨市長と談話する2人

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 共に高山で生まれ育ち高校の同級生同士という2人は、高山市在住で材木卸売業者の中畑太吾さんと各務原市在住で薬剤師の加藤平八郎さん。7月3日には、飛騨市庁舎を訪れ、飛騨の自然環境保護活動に役立ててほしいと、これまでに販売した絵はがきの売上金全額を同市に寄付した。

 取り組みのきっかけは2年前の11月、加藤さんが帰省した際、中畑さんと地元の居酒屋で共に話した飲み話から。

 加藤さんは「この時初めて山中和紙という存在を知った。恥ずかしながら、話を聞くまでは岐阜には美濃和紙しかないと思っていたので、飛騨に100%地元産の和紙があると聞いて驚いた」と振り返る。中畑さんも同世代の友人から最近になって情報を聞き存在を知ったのだという。

 後日早速2人は、飛騨河合の生産者を訪ね、山中和紙の生産過程、特性や魅力、現状と今後の課題などを肌で感じ取ったという。「知れば知るほどすごい和紙。だが、原料から製品までを一貫して手掛ける山中和紙の職人は今やご年配の2人だけ。有史800年におよぶ飛騨産和紙の歴史と伝統技術は消滅寸前。自分たちにできることは何か。まだあるはず」と加藤さん。

 昨年2月、2人は「『飛騨』を世界へ」をテーマに掲げ、「とんぼ舎」と名付けた地域団体を結成。活動を始めた。飛騨河合に何度も足を運び試行錯誤の末、飛騨各所で自ら撮影した写真をプリントした絵はがきを完成させた。

 価格は1枚300円。厚手の和紙は手触りの質感に特にこだわった。製作では写真印刷に最適な紙の厚さと質感とのせめぎ合いに苦心したという。絵はがきは昨年2月から、国指定重要文化財「吉島邸」(高山市大新町)で試験販売を始め、外国人観光客を中心に人気を集めているという。

 この日、市を代表して寄付金を受け取った井上久則飛騨市長は「昨今は、当市に限らず飛騨全域で若者の人口流出が激しく、地元の魅力を発信してくれる人の絶対数が減り続けている。そこで実行力のある2人のような人材は大変貴重。今後、こういった取り組みに続く若者が増え、さらなる活躍ができるよう、行政としてもバックアップできるような施策を考えていきたい」と話した。

 2人は「僕たちは動いた。そしてこれからも動き続ける。行政のように個人の何倍もの力を持っている所は有言実行で、志を持った若者の活躍をうまく引っ張っていってほしい」と期待を寄せる。

 「次は近いうちに、山中和紙をプリントベースにした写真展を開きたい。実際に体験して吸収した知識を駆使してアイデアを出し合い、時代に合った新しい物を作り続けて伝統技術の生かし方を模索する。一方で情報発信を欠かさず確実に行う。両輪の轍(わだち)を残しながら前に進み続けることで飛騨に今ある技術を一つでも多く、未来に伝えていけたら」と意気込む。

 「とんぼ舎」の活動はフェイスブックページで確認できる。

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