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高山で「平和展」-全長100メートルの「昭和巨大絵巻」公開も

1989年制作の「昭和巨大絵巻」と纐纈倫子さん

1989年制作の「昭和巨大絵巻」と纐纈倫子さん

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 飛騨産業本社・体育館(旧・飛騨国際工芸学園=漆垣内町)で8月4日・5日、「平和展」が行われた。主催は「高山戦争を語りつぐ有志の会」とコープ岐阜・飛騨支所などで組織する「歴史に学ぼう平和展実行委員会」。

昭和巨大絵巻

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 同展は今年で3回目。会場には、国内ではおよそ10数年ぶり、同展では初公開の、長さ100メートル×幅2メートルの「昭和巨大絵巻」が展示された。昭和史を生きた日本人の分身「昭和太郎」の一生を通じて、「大正天皇崩御」から「平成天皇即位」までの64年間に起きた130の重大な出来事を走馬灯のように描く。

 同絵巻は1989年、国際工芸学園教授を務めた画家の故・纐纈(こうけつ)敏郎さんが、当時1期生だった同園の生徒5人と教授ら合わせて8人で描き上げたもの。昭和天皇崩御の直後から昼夜問わず制作に取り掛かり、およそ1カ月半で完成させたという。

 劣化の少ない油絵の具、木炭、墨を使い、天竺木綿(てんじくもめん)のキャンバスに色彩豊かに描かれた絵巻は、「2・26事件」「満州事変」「真珠湾攻撃」「広島・長崎の原爆投下後の光景」など、全体スペースの約3分の1を戦争関係が埋め尽くす。戦後は「東京タワー完成」「東京オリンピック開催」といった明るい復興の話題も登場する中、「伊勢湾台風」「チェルノブイリ原発事故」などの出来事も。

 当時の絵巻制作に携わった画家で敏郎さんの妻の倫子さんは「今から23年前、まさに戦場のような現場だった。制作した生徒たちは戦争を知らない世代。『あたかも自分がそこに居合わせたかのような体験をした』と口々に語っていたのが印象に残っている」と当時を振り返る。

 「今、世の中の情勢や生活環境の変化と照らし合わせてみると感慨深いものがある。3・11以降初めて公開したが、期間中、東日本大震災被災者の方も来場されてじっと絵巻を見つめていた。私も人災・天災という観点からあらためて絵巻を見ていろいろと考えさせられた。芸術が破壊と創造を繰り返すように、社会も破壊ばかりは続かない。きっと近い未来は創造にあふれていると信じている」と話す。

 同展ではこのほか、当時の高山航空工業(現・飛騨産業)が製作した「零戦用木製燃料タンクの実物」、同市清見町に米軍が落下した「空襲予告チラシ付きの不発弾」、「戦争報道を伝える当時の新聞」、「本土決戦用訓練に使われた竹やり」など、1000点以上の戦争関係資料を展示した。

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