飛騨の仏師、都竹峰仙(つづくほうせん)さんが制作した仏像「平和の女神」が10月20日、ニューヨークにある国際連合本部に寄贈される。同日、国連本部で寄贈式が行われる。同作品は国連本部内のロビーに永久展示される予定。
都竹峰仙さんは1950年代から1990年代にかけて飛騨を中心に活躍した仏師。1999年3月に88歳で亡くなるまでに木彫りを基本とする数多くの仏像作品を全国に残した。仏像は1975(昭和50)年ごろ発表した「平和の女神」と名付けられた木彫作品。
寄贈のきっかけは、長男の妻・和子さんが命日の3月11日、自宅の仏壇に家族で手を合わせていた直後に東日本大震災が起きた事から。その後、原発事故も発生。和子さんはこの時、峰仙が残したある仏像の存在に気付く。それがこの「平和の女神」だった。
同作品は、峰仙さんが九死に一生を得た戦争体験を元に反戦・反核と平和への祈りを込めて制作したもの。水しぶきを上げる波の中からきのこ雲が立ち上りその上に慈悲の表情を浮かべた菩薩(ぼさつ)が座っている。
「全てが偶然と思えなかった。水しぶきは東北を飲み込んだ津波に見え、きのこ雲は福島原発事故だと思った。今年はちょうど父の生誕100年にあたり、3月11日という命日と大地震の日が重った事に不思議な縁を感じた。父が生前強く言っていた反戦・反核のメッセージを、今こそ世の人に伝えるのが使命だと思った」と和子さん。
和子さんの元には同様の作品が3体あり、思いを知人に相談した所、日本木彫芸術文化財団(東京都文京区)と高山市を通じて1体は広島市に、もう1体は長崎市に寄贈された。そしてこの度、残る1体が先の三市長の新書を携えて海を渡り、国連本部へと寄贈される。
「作品を届けるにあたり、たくさんの方の手助けがあり感謝している。これをきっかけに平和への祈りを世界中の人々に感じ取ってもらいたい。自分の作品がふさわしい場所に置いてもらえて父も喜んでいるのでは」と和子さん。