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飛騨小坂に「桃源いわなの笹巻きすし」-地元養殖組合が昔話の子孫と共同開発

養殖場裏の川で新商品を手にする鈴山さん

養殖場裏の川で新商品を手にする鈴山さん

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 小坂町淡水魚養殖漁業協同組合(下呂市小坂町)が4月14日、「桃源いわなの笹巻きすし」を発売した。

「桃源いわなの笹巻きすし」

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 同商品は2年前、同地の滝巡りトレッキングツアー客用の弁当に考案されたのがきっかけ。ササの葉の殺菌作用と酢飯で日持ちがよいことに加え、棒状で歩きながらでも食べられて環境を全く傷つけないゴミ処理の手軽さから好評を得ていた。同組合長の鈴山忠男さんは「すしねたに使う『イワナのかば焼き』も物珍しいことから、お土産にと望む声が多かったため試行を重ね商品化した」と話す。

 標高3067メートルの御嶽山麓、飛騨側登山道の旧一合目に位置する小坂町の源流で育ったイワナと地元農家でとれた米、近隣の山に自生するササの葉など全て地元素材にこだわった同商品。かば焼きに使うたれは化学調味料を一切使わず、同組合が40年間販売するロングセラー商品の「甘露煮」に使うたれに「飛騨しょう油」「イワナの骨酒」などをブレンドしたもの。

 鈴山さんは「野生の魚は餌を探すため目玉が大きくなるが、うちの養殖イワナも目玉が大きいのが特徴。それは短期養殖でない証拠。個体差はあるが卵から1匹が成魚になるまでおおむね1年半ほど。時間はかかるが、うまい川魚を作るためには必要。薬品を使いたくないので使う必要がないよう源流を直接引き込み自然に近い形で健康に育てている」とこだわりを見せる。

 同商品の開発、調理、味付けを担当した岡部好秀さんは、同地に伝わる昔話に登場する主人公の13代目子孫。「『何か親しみやすいネーミングを』との企画会議中、そう言えば、うちの祖先の話から何かヒントがつかめるかもと思い出した」と振り返る。

 昔話は下呂市小坂町湯屋温泉地区に伝わるもので、今から約450年前の「薬師如来と湯屋の霊泉」という昔話の続編。始まりの昔話から160年後の1660年、八方ふさがりの病に苦しむ江戸の上級武士岡部俊愈(としまさ)」が、夢の中で薬師如来から授かった歌に秘められた暗号を頼りに小坂の湯にたどり着き全快するという物語。

 俊愈はその後、飛騨小坂の地に定住し霊泉の飲み方などを「飛州小坂大洞出湯記」に記したほか、地元の湯治宿「奥田屋」には340年前の創業当時に俊愈が書き残した「温泉湯元開源由来記」の直筆原本が家宝として現存する。同地には病気平癒祈願の薬師如来を祭った湯屋薬師堂もある。

 「この昔話に出てくるキーワード『桃の木』と、源流で育てた川魚にかけて『桃源いわな』とした」と岡部さん。「子どものころから聞かされてきた昔話が、ひょんなことでつながり祖先との縁を感じる。かつてのように再び地域貢献のお役に立てれば」と期待を寄せる。

 価格は1本(150グラム)500円。当面は、滝巡りツアーの出発点「がんだて公園」内にある「がんだて茶屋」(小坂町落合)を中心に販売する。問い合わせは同組合(TEL 0576-62-3045)まで。

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