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飛騨萩原で「魚食文化サロン」-名人が釣った益田川の「寒ウグイ」に舌鼓

「寒ウグイ」の煮浸し

「寒ウグイ」の煮浸し

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 下呂市萩原町の「お食事処 あまの」で3月23日、山や川の恵みを味わい自然との生活文化や歴史を考える「ぎふ魚食文化サロン」が開催された。

釣り名人の天野勝利さん

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 岐阜県内にある河川流域の各地域で2011年から開催している同サロンは今回で10回目。飛騨地域ではこれまで、「馬瀬川のアユ」「金山町のウナギ」など計4回開いてきた。5回目となる今回は、地元や名古屋から12人が参加。下呂市萩原町の中心を流れる益田川(ましたがわ)の川魚料理や同地のジビエ(=狩猟により食材として捕獲された野生の鳥獣)料理などが並んだ。

 この日、テーブルに並んだ川魚料理は「寒ウグイの煮浸し」。12月から3月にかけて捕獲される脂肪ののった小型のウグイ(寒ウグイ)を、調味料やさんしょうを使い煮浸しにしたもの。頭から尻尾まで食べられる柔らかさと弾力ある独特の歯応えが特長。

 店主で、釣り名人として全国的に名が知られる天野勝利さんは「現代では、ウグイは生臭みがあるため食材としては敬遠されるようになってしまったが、かつてのこの地方では、春先の祭り料理の一品として登場するなじみの川魚料理だった」と振り返る。

 「昔の人は『アマゴは売る物、ウグイは食べる物』と言って、お金になるアマゴは食べず、『ス』と呼ばれる麦わらの『コモ』に寒ウグイを串刺しにして、いろりの上で乾燥させ保存食にしていた。食べる時は少し焼いて臭み取りのさんしょうと一緒に鍋に入れ、コトコトと何時間も煮戻す。今日は、かつてはどの家でも実践していた昔の調理法を再現したものを提供した。手間はかかかるが、ウグイの臭みが消えてこんなにおいしくなる」と天野さん。

 テーブルにはこのほか、「アマゴの天ぷら・サラダ風」、猟師でもある天野さんが自ら仕留めたイノシシの「すき焼き鍋」、新開発の「イノシシしぐれ」を使った「笹ずし」などが並び、参加者らは珍しい料理に舌鼓を打った。会場では、天野名人の釣り話や、同サロンメンバーで元名古屋テレビアナウンサーの浅井彰子さんによる飛騨・益田地方の川魚にまつわる伝承民話の朗読も行われた。

 同サロンを主宰する長尾伴文さんは「岐阜県には、川や山の自然と共に生きてきた長い歴史と知恵に培われた素晴らしい文化がたくさんある。それは食文化と密接につながっている。今ではそのほとんどが眠っているが、そのまま朽ち果ててしまう前にもう一度、再発見・再発掘して次世代に継承したい。今後は南飛騨地方に限らず他の飛騨地域でも積極的に展開していけたら」と意欲を見せる。

 次回開催は4月14日12時~13時。場所は「ひめしゃがの湯」(下呂市小坂町)で、参加料は2,500円(炭酸泉しゃぶしゃぶ料理、温泉入浴券付き)。定員なし。申し込みは4月12日までに、同サロン長尾さん(TEL 090-8736-7318)まで。

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