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高山にガレージカフェ「DOTO」-父の形見・旧車「ハチマキ」展示も

「コーヒー好き、車好き、バイク好きの人はぜひ遊びに来てほしい」と話す店主の駒田さん

「コーヒー好き、車好き、バイク好きの人はぜひ遊びに来てほしい」と話す店主の駒田さん

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 アピタ飛騨高山店近くにガレージカフェ「DOTO(ドト)」(高山市国府町名張、TEL 0577-72-4001)がオープンして1カ月を迎えた。

展示中の「プリンス グロリア・スーパー6」(通称・ハチマキ)

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 店舗面積は約15坪。席数は、カウンター9席、テーブル席6席の計15席。店内には、焙煎(ばいせん)機やエスプレッソマシンが並ぶカウンターキッチンに対面してガラス張りのガレージスペースを併設。店主の駒田匡俊さんは「コーヒーを飲みながら他愛(たあい)もない話や車・バイク談義に花を咲かす、なじみの整備工場の雰囲気をヒントにした」と話す。

 店名「ドト」は、駒田さんが格闘技の「カポエラ」をやっていた時、ブラジル人仲間に命名されたあだ名だという。由来は「医師」を意味するポルトガル語「ドウトール」から。「処方箋のように、お客さまの好みやその日の気分に合わせたコーヒーを提供できれば」と駒田さん。「リーズナブルにコーヒーのおいしさを味わってもらえるよう、自家焙煎にこだわっている」とも。

 メニューは、エスプレッソ(シングル250円、ダブル300円)、カプチーノ、ドライカプチーノ(以上400円)、シェケラート(450円)、アフォガード(550円)をはじめ、漫画や雑誌に登場するコーヒーメニューの再現リクエストにも対応する(500円~)。デザートやパスタメニューのラインアップも随時増やす予定。

 ガレージには現在、レストア中の「プリンス グロリア・スーパー6」を展示。同車は、「プリンス自動車」が1964 (昭和39)年に販売した高級グレード「S41 D-1型」で、内装に西陣織のベンチシートなどを採用。かつては皇室御用達車としても活躍し、車体を取り囲むメッキのモールから「ハチマキ」の愛称で旧車ファンに親しまれている。

 駒田さんとっては「父の形見」となる同車。「物心ついたときからずっと、ジャッキアップして毛布をかぶせた状態で、父が自宅ガレージで大切に保管していた。子ども心にもかっこいい車だなぁと思い、よく一人で眺めに行ったり、たまに友だちにこっそり見せて自慢したりしていた」。

 「県外で働いていた22歳の時、父の胃がんが発覚し飛騨に帰る決意を固めた。それから2年間、家業の郷土菓子販売を手伝いながら、いろいろな話を聞いた。結婚前の昭和52年に13年落ちでようやく手に入れた憧れの車だった事。その車に乗って母と九州へ新婚旅行に行き、現地で一瞬の隙を突かれてガラスを割られ中の荷物を全て盗まれて悔しかった事…」。64歳で他界した父の形見の「ハチマキ」は駒田さんが受け取った。

 「ボンネットはぬれたようにピカピカだったが、動く姿を見たことは一度もなかった。調べたら案の定、至る所が劣化していて、エンジンはピストンが固着してかからなかった。一時は価値を理解し大切にしてくれる人に売ろうかとさえ思った」。

 考えた挙げ句、駒田さんが飛騨で『レストアの神様』と信捧する師匠に無償で引き取ってくれと提案したが、「車は受け取れない。おやじから受け継いだ旧車なんてそうそうない。大切に手元に置いて直せ。相談に乗るから」と断られ、思い直したという。

 その後、師匠や知人の協力を得てコツコツと整備を重ねて一昨年、ついに30年間止まっていた車の心臓が動いた。「エンジン音を聞く度に、父がいたらどんな顔をしただろうと想像し胸が熱くなる。手放さないで本当に良かった」と駒田さん。30歳の誕生日に同店をオープンした。

 「先日は、とある企業で50年前に同型車を運転していたという方が、どこかで当店のうわさを聞いてわざわざ遠方から足を運んでくださった。店の車を見ながら『旧友に再会したようだ』と大変喜んでいただき、うれしかった」。駒田さんは「これから何年かかろうとも車を元の姿に戻し、公道で走らせる夢を実現させたい」と笑顔を見せる。

営業時間は14時~20時。水曜定休。

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