高山市が経営する飛騨御岳牧場(高山市高根町)で5月20日、出産を控えた飛騨牛の繁殖雌牛の放牧が始まった。
「千町(せんちょう)牧場」と「猪ノ鼻牧場」(共に同町)の2カ所におよぶ同牧場では毎年、飛騨牛農家の経営安定と繁殖牛の健康増進を図るため、繁殖雌牛の放牧を受け入れている。
千町牧場ではこの日、妊娠が確認された雌牛約20頭が高山市内の飛騨牛繁殖農家から運び込まれ放牧された。牛たちはトラックから降ろされると踊るような足取りで次々と広い牧場に駆け出し、新鮮な自然の牧草や芝を食べたり、谷川に下りて水を飲んだりしながら久しぶりの外の空気を謳歌(おうか)していた。
当日、同牧場で「おーよしよし。今年もよう来たな」と牛たちに話しかけていた下田国蔵さんは、高山市内で33年間、飛騨牛の繁殖業を営む牛農家。「1年間、土日なしで牛のために働くが、健康のためになるし牛も好きなので、苦労はさほど感じない。最近では、跡を引き継いでくれる若い人も見かけるようになってきたので心強く思っている」と話す。
下田さんは「今日は1年ぶりに懐かしい牛たちの顔ぶれを見られてとてもうれしい。体力づくりに励み、健康な子牛を生んでもらいたい」と笑顔を見せる。
飛騨牛の放牧は初夏から今年10月ころまで続き、約40軒の農家が2歳~10歳の雌牛延べ270~300頭を順次放牧していく予定。牛たちは出産までの間、牧場の中を駆け回り栄養豊富な自然の草などを食べて過ごす。