
家庭でもう飾らなくなったとして地域住民らが寄贈したひな人形や土人形を一堂に集めて飾る恒例の「ひなさま展」が現在、久々野公民館(高山市久々野町、TEL 0577‐52‐3112)で行われている。
旧暦で桃の節句を祝う飛騨地方の風習に合わせ、高山の全市一斉で毎年1カ月間にわたり行う展示イベント「飛騨高山ひなまつり」の一環。
同施設では10年前からNPO法人「ふるさと」の女性スタッフが中心となり展示内容を企画している。始めた当時は100体ほどだったというひな人形も、11回目を迎える今年は施設1階に約1250体、和室や会議室などに約200体の計1450体にまで増えた。会場には明治時代から現代の作まで、きれいに飾り付けされた表情豊かなひな人形や土びな・土人形がズラリと並ぶ。
昨年からひな飾りに世相を反映した表現を取り入れた時事展示も行っており、今年は玄関ロビーにマスク姿のひな人形が登場。訪れた地元民の話題を集めている。
同NPO代表理事の岩佐俊介さんは「時事展示は当初、オリンピックイヤーにちなんでおひなさまに聖火を持たせたり金メダルを掛けたり、表彰台に載せたりする案で進んでいたが、新型コロナウイルスまん延が社会問題化したため、急きょ変更。感染拡大防止のためスタッフと一緒に注意喚起を促そうと、おひなさまにもマスクを着用してもらうことになった」と話す。
七段飾りでは、内裏びなをはじめ、三人官女、五人ばやし、随身や衛士に至るまで全員がマスク姿で鎮座し来場者を出迎える。人形用のマスクは、女性スタッフがキッチンペーパーやティッシュなどを使い、一枚ずつ丁寧に手作りしたという。若い三人官女は流行の黒いマスク、感染すると重症化しやすい傾向にある高齢者の左大臣はプリーツ型の分厚いマスクでしっかりと鼻と口を覆うなど細部にもこだわりが光る。
展示は3月1日に始まったが、会場に人影はまばら。この日はマスク姿のおひなさまを見つけて「あれかわいいさ(飛騨言葉で『かわいそう』の意味)」と人形に見入る人の姿もあった。
3月22日に開催を予定していた、ひな飾りのある町内の家々を回ってお菓子をもらう子ども行事「がんどうち」は中止が決定した。「おひなさまのマスクは、政府から終息宣言が発表されたら外す予定。一日も早くマスクを外せる日が来てほしい」と岩佐さん。
展示時間は9時~21時。月曜休館。入場無料。4月3日まで。