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飛騨千光寺で「両面宿儺」特別公開 漫画「呪術廻戦」ファンも熱視線

石造両面宿儺立像を安置する「宿儺堂」

石造両面宿儺立像を安置する「宿儺堂」

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 袈裟(けさ)山 千光寺(高山市丹生川町下保)が現在、開山の祖「両面宿儺(りょうめんすくな)」を祭った「宿儺堂(すくなどう)」内部の特別公開を行っている。境内にある「円空仏寺宝館」(同)でも期間限定展示「宿儺3体そろい踏み」を行っている。

両面宿儺が住んでいたと伝わる「両面窟」

 4月3日から始まった同企画は今回が初めての試み。11月28日までの土曜・日曜・祝日(寺宝館は月曜も開館)限定で一般公開する。

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 約1600年前、両面宿儺が開山し、その約400年後、弘法大師十大弟子の一人である真如(しんにょ)親王が建立したと伝わる同寺。高野山真言宗の古刹(こさつ)として知られ、江戸時代末期にはさすらいの僧・円空が長期滞在し数多くの傑作を彫り残した「円空仏の寺」としても人気を集める。

 1598(慶長3)年に建立された宿儺堂は、中に高さ2メートル20センチある石造の両面宿儺立像を安置する。土蔵造りの堂内公開は通常年一回、11月3日の縁日にのみ行っており、普段は前後にある小窓からわずかに見える顔を拝むことができる。

 日本書記の中に「宿儺(すくな)」の名で登場する両面宿儺は、一つの胴体に2面の顔、手足が4本ずつある異形をなし、大和朝廷に与(くみ)しない逆賊として難波根子武振熊(なにわねこたけふるのくま)に討伐されたと記されている。一方、飛騨・美濃に伝わる説話では、山に住む毒竜や悪鬼を退治したり、民を率いて農耕を教えたり、山野を開拓して祈りの場所をつくるなどした救国の英雄として今も語り継がれている。古代東北地方に実在したという「阿弖流為(アテルイ)」との共通点を挙げる研究者も多い。

 飛騨エリアには千光寺をはじめ、宿儺が住んでいたとされる岩穴「両面窟」(丹生川町日面、道中落石危険のため現在閉鎖)、朝廷との対戦前夜、民に迷惑が掛かるのを恐れ一人屋外に出て庭石のくぼみに飯を盛り最後の晩餐をとったという「御膳石(おぜんいし)」の残る「善久寺」(同)、天皇の命を受け鬼神「七儺(しちな)」を調伏したという「位山」(一之宮町)、最後の戦いに関連する「鎮守山」「下原八幡神社」(下呂市金山町)など、宿儺ゆかりの地が点在する。

 両面宿儺の故郷として知られる地元では現在、漫画「呪術廻戦」ファンが「聖地巡礼」として多く訪れるなど、にわかに活気づいている。

 2018(平成30)年3月、集英社「週刊少年ジャンプ」で漫画連載がスタートした「呪術廻戦」は、芥見下々(あくたみげげ)さん原作のダークファンタジー。驚異的な身体能力を持つ高校生・虎杖悠仁(いたどりゆうじ)が呪術師としての使命を受け、出会いや別れを繰り返しながら「呪い」に立ち向かう仲間と共に成長していく姿を描く。両面宿儺は虎杖に同化し現世での覇権を狙う「呪いの王」として登場する。

 集英社によると、同漫画の発行部数はテレビアニメ化発表の2019年11月時点で累計250万部だったが、アニメ放送が始まった昨年10月から急伸。この1年半で16倍以上の伸び率を見せ、3月31日には公式ツイッターを通じ、「呪術廻戦」シリーズのコミックス累計発行部数が4000万部を突破したことを発表した。今冬には、登場人物たちの前日譚(たん)を描いたコミックス0巻を映像化した「劇場版 呪術廻戦0」の公開が決定している。

 この日、手製の「旅のしおり」と「宿儺の指」などを携えて聖地巡礼に訪れていた20代女性3人組の一人は「地元が(岐阜県)多治見市。小学校の時、学校給食で郷土食材メニューとして『すくなカボチャ』が出ていたのを思い出し、飛騨と両面宿儺の関係に行き着いた」と話す。「昨日は街中で『すくなプリン』を食べて、今日は千光寺、宿儺窟、善久寺を巡るコース。お土産は『大吟醸 両面宿儺』」と笑顔を見せる。「飛騨に来て両面宿儺が実は善人だったということを知り、漫画の中で今後宿儺がどのような描かれ方をしていくのか展開が楽しみ」とも。

 千光寺住職の大下大圓さんによると、昨年から親子連れや若い参拝者が急増しているという。「体感的に全体の半数が呪術(廻戦)ファン。円空目当てで訪れる年配の歴史好きもあらためて宿儺を知る、呪術ファンもここに来て円空さんのことを知る、双方が郷土史の知見を深めるよい相乗効果が生まれたら。いろいろな角度から両面宿儺のことを知り、善と悪について考えるいいきっかけになれば」と期待を寄せる。

 寺務所スタッフによると、最近は3種類ある御朱印の中でも「宿儺尊」御朱印(300円)が特によく出ているといい、「両面宿儺お守り」(500円)も在庫が少なくなり、追加発注をどうしようか考えている最中という。

 円空仏寺宝館で現在開催している「宿儺3体そろい踏み」は、「円空作 両面宿儺坐像」「彩色両面宿儺立像」に加え、これまで本堂奥の目に触れられにくい場所に安置されていた「両面宿儺立像」を初めて並べた展示が見どころとなっている。

 円空仏寺宝館開館時間は土曜・日曜・月曜・祝日=9時30分~16時30分。入場料は、大人(18歳以上)=500円、小中高生=200円。宿儺堂拝観時間は土曜・日曜・祝日=9時30分~16時30分。拝観料=100円。

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