
人気バンド「サカナクション」メンバーの山口一郎さんと飛騨出身の木彫作家で父の保さんが、4月に開校した下呂市立金山小学校(下呂市金山町金山)の校歌を共同制作した。
少子化が進む下呂市金山地区では3月、東第一小、金山小、菅田小、下原小の4校が閉校。新年度に合わせ、旧金山小校舎を改装し4校を統合した金山小が新設された。
下呂市教育委員会によると、新しい校歌と校章の決定に当たり4校区の代表者や教職員、児童の保護者らで組織する下呂市金山町4小学校統合準備委員会と協議を重ねた結果、校章は金山町出身・在住者からデザイン案を募集。校歌は入れたい言葉を4地区の住民から募集した上で山口さん親子に作詞作曲を依頼する形になったという。
北海道小樽市在住の保さんは金山町出身。2013(平成25)年のサカナクション紅白初出場の際、集まってお祝いの飲み会を開いたという地元民の話によると、保さんが盆休みなどで家族と帰省した際はいとこと川釣りを楽しむ一郎少年の姿をよく見掛けたという。バンド名「サカナクション」の由来は、東海エリアで現在「魚動クライミングジム」を経営するいとこのメールアドレスが元であることもファンの間では知られている。一郎さんは金山町にゆかりの深い音楽家ということから準備委員会の校歌・校章部会が白羽の矢を立てた。
昨年6月、所属する音楽会社を通じ一郎さん本人の快諾を得た。昨年8月には保さんが実際に4地区を訪れ、歩いて感じ取ったことを歌詞にまとめ、その後半年がかりで一郎さんがスローバラード調の校歌に仕上げた。
4番まである歌詞はそれぞれ、短いフレーズの中に閉校した4校の地区の特色が盛り込まれている。1番は縄文期岩屋岩陰遺跡のある東地区、2番は美濃と斐太(ひだ=飛騨)の川が合流する金山地区、3番は御岳山を望む「嶽見桜(たけみざくら)」のある菅田地区、4番は幕末に世界一周を旅した俳人・加藤素毛の故郷下原地区に思いをはせる。
校章は、金山町出身で滋賀県在住の奥村美波さんのデザイン案を採用した。日本有数の天然アユ産地として知られる同町の清流を表す「魚のひれ」と、ほどくと一つの輪になる「4つの輪」は4地区をイメージ。どんなことにも一丸となり力を合わせて取り組むことで成長・飛躍してほしいとの願いを込める。
4月3日に行われた開校式には、旧4校で初めての顔合わせとなった2年生から6年生の児童196人が出席。この日のために各校で練習してきたという新しい校歌を、体を揺らしながらマスク姿のまま声高らかに歌い上げた。
「将来の夢は作曲家」と話す6年生の工藤晴君は「サカナクションの山口さんが金山とつながりのある人だということは知っていたが、校歌まで作ってくれたのには驚いた。大ファンなのでうれしい。ちょっと普通の校歌とは違う雰囲気だけどそこがまたいい。4校の良さが入っていてとてもいい曲だと思った」と笑顔を見せる。
松山正人校長は「ゆったりと落ち着いた、何年たっても故郷を思い浮かべながら歌えるような素晴らしい校歌を作っていただいた。校章にもあるように、これからも地域一丸となって故郷を大切にする金山の子どもたちの心を育てていきたい」と目を細める。