飛騨市河合町で11月4日、伝統工芸品「山中和紙(さんちゅうわし)」に使う「コウゾ」や「ネレ(トロロアオイ)」の収穫と材料作りが始まった。
約800年の伝統を誇る山中和紙は、自然を生かした昔ながらの製法で作られる手すき和紙。水に強く、ぬれても墨がにじまないという強固な繊維構造は「山中和紙の大福帳ならば、火事の時は井戸に投げ込め」といわれるほど。
快晴のこの日、同地に2軒のみ残る「漉き家(すきや)」の清水忠夫さん宅でコウゾとネレの収穫、柏木和枝さん宅では一家総出で、収穫したコウゾの表皮をはぐ「黒皮はぎ」や材料の天日干しが行われた。
作業を終え、清水さんは「今年は良い出来」とほほ笑む。柏木さんは「材料にカビを生やすと使い物にならないので、ここから10日~2週間はお天道さまが命。晴れの天気が続いてほしいな」と空を見上げた。
同日、現場では、和紙の製造工程を一から体験するワークショップの2回目も開かれ、近隣地域から集まった参加者6人が、収穫作業の手伝いやクラフト体験を行った。
参加者の一人は「紙が木からできていることをあらためて実感した。クラフトで出た和紙の端切れ一つがいとおしく大切にしたいと思った」と話す。主催者の吉眞陽子さんは「一人でも多くの人が山中和紙の存在を知り、次世代に残すきっかけにつながれば」と期待を寄せる。
同ワークショップでは引き続き参加者を募集している。次回以降の予定は、11月13日=清水さん宅でのコウゾ蒸し・皮はぎ・束ね干し、1月27日=コウゾたくり・雪ざらし、和紙すき、2月17日=雪ざらし・チリより、和紙すき(以上、開始予定時間9時~)。
参加費は各回2,000円。問い合わせは「工房すなか」(飛騨市河合町、TEL 0577-65-2764)まで。