飛騨市河合町で現在、「山中和紙(さんちゅうわし)」の主材料となるコウゾの「雪ざらし」作業など和紙作りの冬仕事が最盛期を迎えている。
山中和紙は豪雪地の同町で約800年前から受け継がれている特産品で、今も地元農家2軒が昔ながらの道具と製法を使った手仕事で原材料から生産している。
雪のある厳冬期のみ行われる「雪ざらし」は、色の白い和紙にするため日当たりの良い雪の上にコウゾ束を並べて漂白する技法で、日を重ねるごとに自然の力で白さが増す。雪ざらしは、太陽光と強い紫外線を受けて気化した雪から発生する「オゾン」の漂白作用を利用しており、科学的にも正しい根拠がある。
同町の和紙職人・清水忠夫さんはこの日、前の晩に降り積もった雪に埋もれた200把(ぱ)以上のコウゾ束を「とび口」で取り出し、テーブルのようになった高さ60センチほどの雪の上に一つ一つ広げ並べていった。
清水さんは現在、「雪ざらし」のほか、コウゾの黒い表皮をこそぎ落とす「コウゾたくり」、冷水に浸しながら細かい不純物を取り除く「チリより」、冬期間のみ作る「寒中和紙」作りなど、山中和紙の冬仕事作業に追われている。
「1~2月にすく紙は、なぜか紙の音や質感が他の季節と全く異なるので『寒の紙(かんのかみ)』『寒中和紙』と言って区別している。60年以上ずっと続けているが、毎年冬のこの時期はひかれるところが多く、忙しくも楽しみな時期」と清水さん。
雪ざらしや寒中和紙作りは、寒さの厳しい2月末ごろまで続けられる。