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高山で「古民家お手入れ隊」イベント-ネットでボランティア呼びかけ

天然油成分を使って床板の仕上げみがきを行う参加者たち

天然油成分を使って床板の仕上げみがきを行う参加者たち

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 高山・丹生川町の古民家で4月8日、「飛騨民家のお手入れお助け隊」イベントが開催された。

山で拾ったクルミの実を細かく砕いた天然の床みがき油

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主催は観光企画会社「ちゅら地球」(飛騨市古川町、TEL 0577-73-5715)。当日は、同社のホームページやメールマガジンを頼りに東京、名古屋などからボランティアで集まった11人とスタッフを含めた計15人が古民家の掃除や手入れを行った。

 今回で15回目となる同企画のきっかけについて、同社社長の山田拓さんは「飛騨の地域資源調査のため古民家を訪ね歩いている時、平均80歳代の高齢者が1人や2人で暮らしながら、『わしらだけで住むには家が広すぎて、柱も梁(はり)も、もう何年も昔みたいには磨いとらん』と話すのを聞いて何か力になりたいと思った」と振り返る。

 この日、お助け隊が訪れた家屋は旧高山市内から移築して80年以上、「江戸から幕末にかけて活躍した白川村出身の力士『白真弓肥太右衛門(しらまゆみ・ひだえもん)』が12歳の時建ち前に参加した」という伝聞が残る築170年以上と見られる古民家。昨年春に妻を亡くしたという84歳の男性家主が1人で暮らしている。

 今年初め、同社の調査員がこの家を訪れた際に家主から「もうすぐ妻の一周忌。思い出の詰まったこの家に親類や知人を呼んで迎えたいが汚くて恥ずかしいし、かといって大がかりな掃除もできない」という話を聞いた。

 当日現地に集まった参加者らは、12畳以上はある広い玄関を中心に、板床、柱、梁、天井などを丹念に掃除した。掃除の仕上げみがきには、用途別にそれぞれ木綿袋に入れた昔ながらの天然油素材「米ぬか」「クルミ」「えごま油」を使った。みがき作業を始めると、カビなどが生え最初は白くくすぶっていた床板も見る見るうちに鏡のような輝きを取り戻し、参加者らのの姿を映し込んだ。使用後の素材は庭木にまき土に帰した。

 この日東京から来たというアメリカ出身のスティーブ・ラックマンさんは、「普段はシステムエンジニアをしているが、日本の木工技法に強く関心をもっているため参加した。木の良さは知っていたが、みがくほどに輝く木の床には感動した。今日は仲間と一緒にとても特別で貴重な経験ができた。本当に感謝している」と話していた。

 「アメリカで木造建築といえば直線的に切った木を主に使う『ログハウス』だが、100年以上も持たせる事は初めから考えていない。その点、木と土で造る日本の木造建築は全く別物。道具がない時代に曲がった木を梁に使うアイデアや構造計算をどうやって考えついたのか。現に100年以上たった今でも寸分の狂いなくそれを証明している。すごい技術」とも。

 掃除後には、参加者がピカピカになった玄関に集まり昼食をとった。家主が手製の豚汁や甘酒を全員に振る舞いながら、「本当に何とお礼を言ってよいのやら…。皆さんには本当に感謝しています。これで安心して一周忌を迎えられる。ありがたい」と感謝の言葉を伝えた。

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