飛騨古川で4月19日・20日に行われる「古川祭」の呼び物の一つ「起こし太鼓」の準備が現在、飛騨市古川町内各所で行われている。
別名「やんちゃ祭」「喧嘩太鼓」とも称される「起こし太鼓」は、本祭の前夜祭として毎年19日夜から20日未明にかけて行われる同町の春の風物詩。昨年は東日本大震災のため同行事を自粛し延期となっていたが、今年から再開する。
さらし姿の裸男たちが、同町内の至るところで夜な夜な繰り広げる三つどもえの攻防戦が見どころの同行事。直径約80センチの「大太鼓」を載せたやぐらの直後に、長さ約3メートルの丸太棒に小太鼓を結んだ「付け太鼓」を付けることが最大の名誉とされ、町内別12組に分かれた「付け太鼓」集団が知恵を絞って戦略を練り、町内の威信と名誉を懸けて辻々から飛び出し、付けるのを阻止しようとする大太鼓にわれ先に付けようと他組と激しくぶつかり争う。
本番を目前に迎え、今年「起こし太鼓」主事の「白虎組」で大太鼓の「太鼓打(たいこうち)」係長を務める三塚学さん宅では、太鼓の「ばち」製作が行われた。地元の山や河原から刈り取った約1メートルの「柳」の木をかんなで削り、仕上げに紙やすりなどを使って木肌を整える。当日までに一人平均6~7本、多い人で10本を製作し、その中から本番で使用する1本を決めるという。
三塚さんは「花形の『太鼓打』係は毎年20人だけしか選ばれないとあって、決まった時はうれしかった。今は本番に向けて、高揚感を抑えつつ体力作りや準備を行っている。正直、祭が終わるまで仕事が手につかない(笑)」と話し、この日一緒に「ばち」製作をしていた松田浩延さんは「一生に一度の晴れ舞台。日を追うごとに伝統の重みが増してくる。当日は『起こし太鼓』の名に恥じないよう気合を入れて立派な太鼓をたたきたい」と意気込みを見せる。
見物客に向けて、「当日は周りの安全状況を確認しながら見てほしい」と三塚さん。「ちょうちん行列が来たら黄色信号。大太鼓のやぐらが見えたら赤信号。特に交差点の角地は突進してくる『付け太鼓』にはね飛ばされる危険もあるので、『付け太鼓』集団の動きを見ながら、くれぐれも巻き込まれないように。自分自身で身を守り安全に祭り見物を楽しんでほしい」とも。
起こし太鼓の開催時間は19日21時~翌1時30分。翌20日に行われる本祭は8時~17時30分。御巡幸と祭り屋台の引きそろえ、からくり奉納、子ども歌舞伎などが行われる。