見る・遊ぶ 暮らす・働く 学ぶ・知る

飛騨古川に「吉城の郷」-地元男性2人、廃屋化憂い築143年の古民家改修

「大工の置き土産」を前に「吉城の郷」館長の石原さん

「大工の置き土産」を前に「吉城の郷」館長の石原さん

  • 0

  •  

 飛騨古川に9月14日、築143年の古民家・旧佐藤家を改修した「吉城の郷(よしきのさと)」(飛騨市古川町大野町、TEL 0577-73-5050)がオープンした。

「吉城の郷」外観

[広告]

 同館は、かつて飛騨国大名・金森家の重臣だったという旧当主が1870(明治3)年に建造した邸宅。市街地から少し離れていたため大火や都市化の影響を受けなかったことが幸いし、ほぼ当時のままの姿で飛騨地域の郷士住居の建築様式と風格を今に伝える。

 昭和40年代以降、後継者の上京をきっかけに無人となり廃屋化しつつあったが、朽ち果てていく姿に心を痛めていた地元在住の石原捷栄(しょうえい)さんと駒卓雄さんが持ち主から土地と建物を買い取り、昨年から地元の大工と改修に当たっていた。

 館長の石原さんは「文化財の指定を受けていないので助成金は望めなかったが、飛騨人の誇りと血と汗と涙の結晶のようなこの建物をどうしても救いたくて、後先考えている暇はなかった。まずは行動と、自分たちの年金や貯金を切り崩し保存費用に充てた」と振り返る。

 石原さんらは「昔通りの工法で直さないかん」とのポリシーの下、飛騨中から古式の大工技術を知る職人を探し出し、くぎや新建材を使わない改修・復元工事を依頼。10カ月かけて雨漏りする天井、破れぶすまに雨ざらしの廊下や戸袋、柱や土台の交換のほか、土中に埋もれていた庭石も掘り出して元の配置に戻したという。改修の話を聞き、地元内外からボランティアの若者たちが清掃や手入れに幾度となく訪れた。

 「もう少し手入れしたい部分も残っているが、ようやく人に見せられる形となり感無量。ただ後先考えず復元したので、これからこの建物をどう維持保存していくか妙案を模索中。さて困ったな(笑)」と頭をかく。

 総敷地面積は約800坪。母屋には、1階に大小16部屋の和室をはじめ、太い梁(はり)や木組みを見上げる吹き抜け天井、4棟の土蔵、茶室、たたき土間、いろり、現役のかまど、コイの泳ぐ水溝などがあり、居住当時の豊かな生活空間をしのばせる。土間の片隅には「飛騨の古式建築工法を集めた寄せ木モデル」も。改修に携わった大工が置き土産に残していったものだという。

 邸内にはこのほか、土蔵空間を活用した古美術ギャラリー「美術館 蔵」と飲食スペース「茶処 くら」を併設。昭和期に建てられたという「離れ」の木造家屋は多目的交流スペース「飛鳥の館」として今後地元のイベントや各種教室に貸し出す予定。

 石原さんは「いつか必ず、こういうものを残していておいてよかったと思う時が来る。いずれは飛騨古川を代表するランドマークになれば」と笑顔を見せる。

 開館時間は10時~16時。入館料=200円、ギャラリー観覧料=500円。水曜定休。

  • はてなブックマークに追加
エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース