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飛騨河合で「地歌舞伎」公演-200年以上続く郷土芸能、仕上げ稽古に熱

仕上げ稽古に熱のこもる舞台の様子

仕上げ稽古に熱のこもる舞台の様子

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 飛騨市河合町公民館で11月17日、「河合町むら芝居大公演」が開催される。主催は河合町地歌舞伎保存会。同日、「飛騨かわい里山の恵み市」も初開催される。

古くから使われている「ふすま」

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 同町に伝わる地歌舞伎(村芝居)の歴史は古く、1809(文化6)年の記録が地元神社に残る。明治中期には町内5地区の神社で地歌舞伎や興行歌舞伎が毎年盛大に行われていたといい、当時をしのぶ襖(ふすま)や小道具の一部は今でも現役で活躍している。

 役者、三味線、はやし方に名取りの玄人(くろうと)を使わず、道具、演出など裏方に至るまで全て地元在住の素人だけでまかなっている形態は、地歌舞伎文化の盛んな岐阜県内でも珍しく、飛騨地域では唯一同町のみとも。日本に代々続く名跡でも用いられている本格的なせりふ回しや所作も見どころの一つ。

 演目は「絵本太功記・十段目 尼ヶ崎閑居の場」。本能寺の変で織田信長を討ち取った後の明智光秀の説話に基づく創作劇で、明智の名をもじった主人公「武智十兵衛光秀」の母・皐月(さつき)の隠居先・尼ヶ崎で次々と起こる一族の悲運を描いた物語。

 公演では小中学生4人を含む地元住民12人が途中配役交代で役者を務める。公民館では現在、本番を目前に熱のこもった仕上げ稽古が連日行われている。

 今回歌舞伎役者に初挑戦する川邉冬希さんは、飛騨市の嘱託職員として今年4月から河合町に住む山形県天童市出身の20代女性。「生まれ故郷は新興住宅地で近くに神社がなく、世代を超えて共に汗を流すようなお祭りもなかった。毎日がカルチャーショックの連続ですごく楽しい」と話す。

 「歌舞伎は見るのも演じるのも初めて。しかもお坊さんの大役を頂き責任重大。『お坊さんらしい所作を意識しつつ見る人に分かりやすいよう大きく動くこと』、どちらも体験したことがないのでなかなか板につかないが、経験豊かな小学6年の先輩をはじめ、みんなが優しく的確に教えてくれるので心強い。当日は精いっぱい演じたい」と笑顔を見せる。

 現在79歳の古澤好一さんは演技指導監督兼役者。「物心ついたときからこの村にある地歌舞伎は一年で最大の楽しみ。今でもこうして続けられることに感謝。いろいろ大変だと思うが熱心に稽古を積んでくれる若い人の存在は本当にありがたい。目の肥えた観客たちの喜ぶ顔を見るのが何よりの励み。役者は今年で最後にしようと思っているが、どうしようか」と目を細める。

 上演時間は14時~16時。入場無料(要整理券)。当日は、同町で採れた山菜などを使った初企画の「歌舞伎弁当」(1,000円=要予約)も販売する。整理券と弁当予約は、飛騨市観光課(古川町)、河合・神岡・宮川町各振興事務所、ゆうわ~くはうす(河合町角川、TEL 0577-65-2180)まで。

 同時開催の「飛騨かわい里山の恵み市」では、「漬物の菜洗い」など昔の里山暮らしを伝える写真展、「きのこ弁当」「山菜いなり」「五平餅」「イワナの塩焼き」、食用バラや山菜加工品、秋野菜、野草茶など地元特産品の販売、子ども対象の木工教室や紙芝居・影絵劇の上映などを展開する。先着300人には「なめこ汁」の無料振る舞いも。時間は10時~16時。

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