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「高山旭座」閉館へ-無情のカウントダウン、飛騨から映画館が消える日

1984年開館当初のたたずまいを残す高山旭座本館

1984年開館当初のたたずまいを残す高山旭座本館

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 飛騨唯一の映画館「高山旭座」(高山市三福寺町、TEL 0577-33-8302)が年内中に閉館する意向を示している。早ければ今夏にも閉館し、跡地にはスーパーマーケットが出店を検討している。

館内入り口お菓子売り場

 高山旭座は1984(昭和59)年12月、国内初の複合映画館として鳴り物入りで開館。今年で30年目を迎える。前身は昭和30年代、飛騨市古川町金森(現・JAひだ古川支店)にあった芝居小屋「旭座」を引き継ぐ形でできた「古川劇場」。そののち「新栄会館」(現・飛騨古川まつり広場)と統合し営業後、高山市に移転。現在は飛騨広域に唯一ある映画館として親しまれている。

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 同館支配人の牛丸昭則さんは「シネコン(シネマコンプレックス=複合映画館)なんて言葉がまだ無かった時代。映画館といえば単館営業が普通で、複数の映画を同時上映でき何十台も車が停められる大型駐車場を持った映画館は当時国内に例がなかった。革新的な取り組みとして全国から業界関係者が視察に訪れるなど注目を浴びた」と振り返る。

 80年~90年代には日本アニメやハリウッドSFXなどの映画ブームに後押しされ、1998年7月、それまで2館複合だった「オスカー1」「ミラノ2」の南側に別館「ウエスト3」「サウス4」を新設。4館複合施設となる。それでも時には立ち見も出る盛況ぶりで、最盛期には年間来館者10万人を誇ったという。

 近年は、富山市や岐阜市の大型ショッピングモールに併設するシネコンの影響を受けて地元の客離れが著しく、人口当たりの入館者数は全国平均の半分にまで落ち込んだ。日中、客が誰もいない日も多くなった。

 「アバター(2009年アメリカ映画)で乗り遅れたのが痛かった。当時のうちの映写機は昔ながらのフィルム機。3D映像システム対応のデジタル映写装置を導入する資金がなかったので、アバターもフィルム上映だった」と牛丸さん。

 「たとえ話題の映画を導入したとしても、シネコンの豊富な資金力と最新設備、サービスデー乱発戦略などを前になすすべもなかった。味のある昭和映画の特集など企画もいろいろ工夫したが、100~200人増えた所でいつも頭打ち。全く歯が立たなかった」と肩を落とす。

 同館は昨年、全館デジタル化。人気の3D映像も楽しめるようになった。「ただ、デジタルの怖い所は何かの拍子で電気系統にトラブルが生じると、いっぺんに白紙に戻ってしまう所。フィルムと違って続き再生の対応も瞬時にできない。毎日、停電が恐ろしくて仕方がない」と話す。

 現在同館では、「5年か10年に一度来るヒット作」(牛丸さん)という「アナと雪の女王」をロングラン上映中。来館者数はもうすぐ1万5000人に達する。「あともう2万人ほど来てくれれば閉めずになんとかやっていけるのだが…。ただ付け焼き刃では意味がなく、年間通じてお客さまが継続してくれないと無理」。

 「オール飛騨高山ロケで制作した日本映画『ポプラの秋』が来春ロードショーを控えているが、それまで持ちそうにない。悔しいがあきらめるしかないのかな」と力なく笑う。

 「世の無情を感じるが、これも時代の流れ。古川の芝居小屋を引き継いでからおよそ半世紀、映画を楽しみに見に来ていただいた皆さまには本当に感謝の気持ちでいっぱい。長い間ありがとうございました。このかいわいには地元のスーパーマーケットがないので、今後はきっと近所の人に便利で喜ばれる土地に生まれ変わるだろう」と牛丸さんは目を細める。

 現在上映中の映画は「高山旭座シネマNAVI」から確認できる。