白川郷の白川八幡神社(白川村荻町)で10月14日・15日、「どぶろく祭り」が行われた。
約1300年前の和銅年間(708~715年)から続くとされる「どぶろく祭り」は9月末から10月中旬にかけて、白川郷にある5つの神社で順番に行われる例祭の総称。
「天下の奇祭」とも称される同祭では、各神社の境内で神酒として参拝者に「どぶろく」の振る舞いが行われる。「どぶろく」は、地元で採れた米を使った「もろみ」を濾(こ)さない「にごり酒」で、かつてはヒエやアワなどでも造られていたという。
同神社の境内では、伝統芸能の奉納や「どぶろくの儀」など神事の後、参拝者全員にできたてのどぶろくが振る舞われた。甘い香りに包まれた境内では、「切立(きったて)」と呼ばれる銅製の酒器を持ったかっぽう着姿の女性らが、次々と参拝者に真っ白などぶろくをついで回った。
神社に400円を志納することでもらえる「朱盃」を手に入れると、前夜祭と本祭の2日間のみ「どぶろく飲み放題」になるとあって、境内ではあちらこちらから「もう一杯」などの声が飛び交った。14日、白川郷を訪れた観光客は2万1000人(白川村役場発表)。6年ぶりとなる日曜日の開催と相まって、秋晴れの下、にぎやかな秋のひとときとなった。
同神社の氏子総代会長を務める板谷克雪さんは「荻町のどぶろくは、アルコール度数がほかの神社に比べて低く、飲みやすいのが特徴。今年は度数15.8度、若干甘酸っぱい『初恋の味』」とほほ笑む。「当祭の魅力は、初めて会う人とお酒を飲んで仲良くなれるのはもちろん、いろいろな人と再会できるところ」とも。
「白川郷では、豪雪のため冬季の帰省が難しい親類縁者や友達、遠方からの顔なじみなども年に1度、この祭りをきっかけに顔を合わせるのが昔からの習慣。地域の団結力の源にもなっている。人が集まって自然に出来上がる不思議な祭り」と板谷さん。
横浜から2回目の参加という男性は「神社の境内で、地元の人に混じって酒を酌み交わすのは最高に気持ちが高まる。世代や出身地を超えてコミュニケーションがとれる雰囲気も好き。来年も来たい」と笑顔を見せる。
今後、白川郷集落のほかの神社でも同様の祭りが行われる。日程は以下の通り。鳩谷八幡神社(白川村鳩谷)=10月16日~17日、飯島八幡神社(同飯島)=同18日~19日。
開催時間の詳細など、問い合わせは白川村役場(TEL 05769-6-1311)まで。