高山の木工家具メーカー「飛騨産業」(高山市漆垣内町、TEL 0577-32-1001)が11月20日、産官学で共同開発した「腰に優しい椅子」の受注販売を始めた。
90年以上にわたる木製椅子作りのノウハウを持つ同社が、腰痛で苦しむ人向けに特化した椅子を販売するのは今回が初めて。
椅子の開発に携わった同社デザイン室主任の坂井雄大さんは「日本人の約8割が腰痛を経験しているという統計があり、私の上司も長年腰痛に悩まされている。パソコンなどのデスクワークが年々増加する現在、社内外から腰が痛くならない椅子の切実なニーズがあった」と話す。
同社では昨年4月、骨格の順列構造や連携を意味するアラインメントから銘打った「アラインプロジェクト」を立ち上げ、独自の実験装置から得た豊富な人間工学データを持つ「岐阜県生活技術研究所」(高山市)、脊椎骨関節再建外科を専門とする岐阜大学医学部・宮本敬准教授と共同で、腰痛軽減に役立つ椅子の研究開発に取り組んできた。
スウェーデンの整形外科医ナッケムソンの研究では、椅子に座った状態は真っすぐ立っている状態に比べて腰椎(ようつい)の椎間板に1.4倍の負荷がかかり、座位から猫背になると約2倍の負荷がかかるという。
同プロジェクトでは、元来安楽性を高めるために背板に向かって沈み込む傾斜を取る一般的な椅子の構造が、同一姿勢を継続するデスクワークではかえって腰痛の原因となることに注目。
腰に負担をかけない最適な座面の角度やクッション素材の反発性などを徹底的に分析した結果、あえて座面が自在に動くことで血流や筋肉の圧迫負担を大幅に減らし腰痛を軽減する椅子が完成した。
11月30日には高山市内で、腰痛者向け椅子発売を記念した健康講演会「きつつき講座~腰痛・神経痛で困っている方々にお伝えしたいこと」を開き、開発担当者・宮本准教授の話に市民ら200人が耳を傾けた。講演会終了後は聴衆者から早速椅子の注文が寄せられた。
同社広報課によれば、今年9月に開いた見本市でも全国の家具小売店20社ほどからすでに予約注文を受けており、現在急ピッチで100脚以上の生産体制に入っているという。
椅子は2タイプを用意。前後上下に座面が動き腰の動きをサポートする「スライド&ロールタイプ」、腰に優しい前傾角度のみで座面の安定感を求める人向けの「骨盤サポートタイプ」があり、うちサポートタイプは座面後部の角度調節ができる可変式と日本人の平均値に合わせた固定式の2種類。材質は全てナラのムク材を使用し、脚の高さ調節にも対応する。
価格は、スライド&ロールタイプが6万8,250円~。骨盤サポートタイプ(固定式)が5万400円~、背板の節あり・節なし、座面素材により価格が異なる。完全受注生産品。問い合わせは同社高山ショールーム(高山市名田町、TEL 0120-606-655)まで。