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飛騨春慶塗がイタリアの弦楽器とコラボ-40年ぶり、和洋職人が共同制作

春慶塗の工房で打ち合わせを行うベルゴンツィさん(左)と熊崎さん(右)

春慶塗の工房で打ち合わせを行うベルゴンツィさん(左)と熊崎さん(右)

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 イタリア・クレモナ市の弦楽器職人・リカルド・ベルゴンツィさんが6月28日、共同制作する楽器の打ち合わせのため、高山の飛騨春慶(しゅんけい)塗師・熊崎信行さんの工房を訪れた。主催は「飛騨高山文化芸術祭こだま~れ2013」実行委員会。

楽器の感触を確かめる熊崎さん

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 弦楽器作りの塗装工程で「ニスの代わりに漆(春慶)を施す」同企画。高山では1973(昭和48)年、スペインのギター職人・アントニオ・マリンさんが飛騨の春慶塗師・谷一彦さんの元を訪れ「春慶塗ギター」の共同制作を依頼した例があり、公式には40年ぶりの和洋職人による春慶塗と弦楽器のコラボ実現となる。

 この日、ベルゴンツィさんは自身が制作した白木のバイオリン、ビオラ、チェロなど4丁を携え熊崎さんを訪問。飛騨春慶の試し塗りサンプルなどを確認しながら、仕上げまでの工程について入念な打ち合わせを行った。

 イタリア北部に位置するクレモナ市は、17世紀後半~18世紀初頭に弦楽器の名器「ストラディバリウス」を産出したことでも知られる楽器製造の中心地。リカルド・ベルゴンツィさんは同地在住の著名な弦楽器職人で、日本の音楽家の間でも広く名が知られている。

 「飛騨春慶」は飛騨高山を代表する伝統工芸品で、「透き漆」と呼ばれる半透明の漆を使い、天然の木肌が際立つよう塗られた漆器。軽くて丈夫で、経年とともに深みを増す色合いと表面に浮き出す木目が特徴。

 ベルゴンツィさんは「漆というと硬くて頑丈なイメージを持っていた。塗装が硬いと振動が抑えられて楽器が鳴らないが、飛騨春慶をはじいた感じではどうも様子が違う。クレモナで50年ほど前に使われていたニスにも似ていて非常に面白い感触。いい音が出てくるのでは」と話す。

 「これまで何度か日本を訪れているが、伝統工芸の職人さんとの交流は今回が始めて。ヨーロッパには漆が存在せず、自分の周りではこれまで楽器に漆を塗ったという話も聞いたことがない。有史始まって以来の出来事で好奇心と興味が尽きない。どんな楽器に仕上がるのかとても楽しみ」と期待を寄せる。

 熊崎さんは「経験では15年ほど前に、個人の依頼でバイオリンと琵琶を塗ったことがある。今までクレームが来ていないところをみると、うまくいったのでは(笑)。今回は世界的に有名な職人さんの弦楽器が大小合わせて4丁と責任重大で緊張しているが、持っている技術を全て投入するのみ」と笑顔を見せる。

 工房では、「もしうまくいくようだったら、これからうちの楽器は飛騨春慶でいこうかな」と、ベルゴンツィさんから本気とも冗談ともつかぬ発言も飛び出し周囲を驚かせた。

 楽器は10月に完成する予定。来春には高山市内で今回の楽器を使った演奏会を開く。

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